最速

15年前に、娘のガス漏れ症状を治すために、その道を往復した。どうしても娘にそうした観念を植え付けた原因を探り当てたかったからだ。それから15年経って、同じ年齢の子を乗せて倉敷に車を走らせた。なんとなくかつて経験した光景だと、胸に迫るものがあった。本当は我が家に泊まりたかったのだが、お母さんが配慮してくださり、ホテルで一泊しての治療の旅になった。しかし僕はそうした堅苦しい事が苦手だから、彼女を知ることだけに努めた。この子には敵がいないと思わせるほど、ふくよかで優しい顔をしていた。はっきりとした将来への設計を持っているのに、それがガス漏れなどで頓挫しそうなのが痛々しかった。「どうしても治したいんです」とメールで訴えてきた理由が、目指している医療関係の仕事故と分かって、余計克服して欲しいという思いは強くなった。土曜日にお母さんと2人で薬局に来て、日曜日は倉敷観光と後楽園を3人で楽しんだ。彼女の悩みや人柄や環境をを知るには十分だ。そして何よりも完治して欲しいと願う僕の気持ちが強くなる。  昨日お母さんからお礼のスイーツが届いた。今朝になって御礼のメールをしようと思っていたまさにその時、彼女から電話があった。そして「漢方薬を飲んで5日目に治りました」と報告してくれた。それはそれはとても嬉しかった。なんて素敵な報告で今年を終えることができるのだろうと感謝したいくらいだった。950人くらいは過敏性腸症候群漢方薬を飲んでもらってきたが、そしてその中で10人くらいは2週間で完治した人もいたが、5日は最短記録だろう。青春前期の輝いて当たり前の世代の子を、あの忌まわしい不快な毎日から救うことができたのだから、達成感は大きい。特に顔も見て、一緒に2日間で恐らく10時間近く過ごしたのだから情が移ってしまい、頭の隅にいつも引っかかっていたから余計嬉しい。  僕の気力体力がいつまで持つのだろうと、ことあるごとに自問する今日この頃だが、まだまだやれるのかと高揚気味の僕を見て、妻が即座に僕をクールダウンさせてくれた。最近、家庭内の僕の評価が一直線で下降しているのが僕の弱気の原因でもあるのだが、僕にはもう一人新しくどうしても手助けしたい少女ができた。薬剤師が祈るようでは頼りないが、祈るような気持ちで漢方薬を作った子がいる。ぜひその子からも今日の子と同じような連絡が来ることを祈っている。