構図

 果たして国の家族にいくら工面してもらったのか分からないが、15万円貸してくださいと妻のところにメールをしてきたらしい。どうして妻のところかよくわからないが、学生として再来日したときに、日本での必需品代が足らないからと言う理由で頼まれ5万円用立て、入学祝だから返さなくていいと言ったのを心苦しく思ったのだろうか。かの国の人にとっては人に借金することは、ごく普通のことなのだ。村ぐるみで、町ぐるみで助け合うから、勉強のために外国にわたる青年たちを喜んで応援する。  日本語の勉強のために来日し、1級試験を受けるほど上達したから、専門性がある大学に編入したいらしい。素晴らしいことだ。ただ日本の大学の授業料は彼らの生活水準からいえばやはり高くて、大学や学部の選択は希望よりも経済のほうが圧倒的に優先する。国費を使って留学できるエリートならいざ知らず、普通の青年にとってはやはり家庭の経済力がチャンスを左右する。  今は円安だから実際の換算は出来ないが、テレビでかの国から来た人が、10倍くらいの貨幣価値の差があると言っていた。となると、かの国で集めたお金は、かの国ではどのくらいの負担になるのだろう。僕の入学祝を律儀に返してくれたように、何年もかかって返済するのだろうか。それとも日本で見事職を得て、あっという間に返してしまうのだろうか。いずれにせよ、向学心とその後の人生設計に貪欲なことには頭が下がる。親の庇護の元、なんとなく食って行くことが出来るこの国の若者たちよりも逞しく感じる。いずれはこの国も他の国のように多くの国籍の人たちが住み、良いことも悪いことも人種の坩堝と同じだけの容量を持った坩堝になるのだろう。まあ、その頃は僕はいないだろうから、大手を振って歩く外国の人たちの影で右往左往する日本人を見ることはないだろう。 運よく僕は良質な外国の人たちと接する機会が多いから、又この国の悲惨な人間性の低下をよくニュースで見聞きするから、外国人が増えることを必ずしも否定的には取らないが、せめて残っている日本の良質な部分を、日本の低俗に輪をかけたような外国人に蹂躙されない様に願う。安い労働力として輸入した人間の実害を被るのは輸入したやつ等ではなく、同じ共同体で暮らす羽目になるごく普通の住民達だ。何をしても、何が起こってもこの構図は変わらない。しわ寄せはいつも弱い人たちの上にもたらされる。