打算

 息子と娘に感謝することがある。  かの国から専門学校にやってきた二人の女性は、自転車を1台だけ買って、二人乗りで通学するつもりだったらしい。倹約だ。そのことが分かった僕は、翌日自転車を1台届けることにした。娘夫婦が昨年買ったままで、ほとんど使わないまま場所だけをとっているのがあったから、それを譲ろうと考えたのだ。娘は即答で賛成してくれた。  二人は寮に入るのだが、勿論寮費をとられる。切り詰めた生活をしなければならないことが分かっているから、僕は心配していたのだが、もう一人、娘が心配していたことが分かった。兄が必要になくなった築3年の家が空いているのを知っているので、それを二人に無償で貸してあげようと考えていたらしい。その配慮が嬉しかったので兄に「○○は結構優しいよ、あの家を二人にただで貸してあげようと考えていたらしいよ」と言うと、「二人には優しいけれど、兄には厳しい(ローンのこと)」と言っていた。これはある理由で実現できなかったが、その発想はまったく僕と同じだった。  今度の週末に奈良からかの国の留学生が遊びにやってくる。遊びというより岡山に越して来たいみたいで、その相談だと思う。土曜日に一泊したいみたいだが丁度捨てたところであまっている布団がない。すると息子が一つ貸してあげると即座に言ってくれた。これで解決。  別に自慢できるところはない二人だが、そしてそもそも家族を自慢などすべきでもないのだが、無償で人の役にたとうとする心があることが嬉しい。二人とも力んで言うのではない。1秒で返事を返してくるからまったく打算の入りこむ余地はない、単なる人柄だろう。それが偶然備わっているだけでいい、それ以上望んだら望みすぎだ。