観光地

 来月、津山に和太鼓の演奏を聴きに行くから、ついでにどこか有名なところに寄ってみようと思った。インターネットで探してみたがどうもぴんと来る所がない。さらばとばかり、薬局にやってくる目ぼしい人に軒並み尋ねてみるが、いい返事はまったく返ってこない。県北の中心都市として有名だから何かあるだろうと思うが、天守閣のない城くらいしか名前が挙がらない。先日姫路城に行ったばかりで、この落差は応えそうだからあえて選択肢からはずす。順番が逆ならいいが。  仕方がないから、僕の苦手なグルメででも行楽気分を味わおうとこれまた探してみるが、どうもぴんと来ない。グルメでぴんと来ないのはいつものことだからそれこそあまりぴんと来ないが、かの国の若い男女7人を連れて行くから、安くて美味しいが必須条件になる。僕一人なら安くてまずいでも平気なのだが。迷っている僕に息子が「ホルモンうどんを食べたけれど、ギトギトして残した」と教えてくれた。あの年齢で残すくらいだから、僕など匂いだけでもたれそうだと、これまた選択肢から除外した。  実はこのような経験は珍しくなく、太鼓や第九のコンサートを求めていろいろなところに足を積極的に伸ばしているが、意外と訪ねるべき所をもたないところは多い。結局は単なる商業の集積地みたいなところが多くて、買い物をするだけの街が多い。買い物目的で訪ねているのではないから、結局は何もすることがないのだ。時間ぎりぎりに到着し、コンサートが済んだらすぐに帰って来る。まさにピンポイントで訪ねる場合が多い。  恐らく観光地は観光地なのだ。何か見る物楽しむ物を持っているのだろう。商業の集積地とは明らかに持っているものが違う。となると僕の薬局は観光地の中にある薬局だ。道理で商業的には恵まれていないと思っていた。そのハンディーとの戦いが漢方薬を勉強することだったのかもしれない。海を相手に、丘を相手に、畑を相手に商売は出来ないものなあ。だけど、海が好きな、丘が好きな、畑が好きな人を相手に出来たから穏やかな薬剤師人生だったのだと思う。