苦難

ここ5年間における患者トラブルの経験の有無を尋ね、「経験あり」と答えた院長は全体の68.7%。20%超の開業医が「トラブルが現在も進行中」と回答しました。トラブルになった患者の中で一番多かったタイプが、「診断や治療方針に対し自分の希望を押し通す」というものです。患者トラブルの経験を持つ開業医の54.1%がこのタイプに遭遇していました。また、「待ち時間に対するわがままを言う」(32.7%)や「治療結果に対する文句を言う」(30.6%) 困った患者に関するエピソードを募ったところ、やはり治療方針に対する希望をゴリ押しするケースが多数寄せられました。「アトピー性皮膚炎の患児の父親が思い込みによる治療方針を押しつけてきた。合理的な方法でなかったので拒否したら激高された」「自分で自分の病気を診断し、『自分はこういう病気だからこの薬を処方せよ』と命令してきた」「睡眠薬の処方を強要する集団が受診してきた」

 お医者さんには苦難の時代が来た。今まであまりにもいい目をしてきたからやっと普通の関係になっただけだが、その関係に慣れていなかった人にはつらい時代が来ている。お医者さんも増えすぎて今ではコンビにより密度が高い。これだけ増えれば選択の自由は広がって、好ましくない医者にわざわざかかる必要はなくなる。気に入らなければ次もその次もその次もある。いやはや頭を下げる必要もなくなったわけだ。上記の文章は、ある業界紙に載っていた文章の抜粋だが、なんとなく判る気がする。やくざいし(ヤクザ医師)の僕には、患者さんの言い分と、医師の言い分の両方が分かる。鼻持ちならぬ患者の要求にうんざりしている姿も、鼻持ちならぬ医師の態度に忍耐の限界が来ている患者たちも両方理解できる。権威を失いたくない医師と、権利を手放したくない患者とのせめぎ合いだ。  見える体調不良には俄然知識や権利を振り回す人も、見えなくてしかも最強の有害物質に関しては見てみぬ振りで、借りてきた猫も驚くほどの従順ぶりだ。毎日着実に蝕まれているのに、見ないように聞かない様にすることで苦痛から逃れている。些細なことで激昂する惨めな醜態をさらすより、もっと巨大な力にそのエネルギーはとっておいて欲しいものだ。