冷気

 この1週間くらい、僕は冷気に誘われている。遅い夕食をとり9時頃からウォーキングに出かけるが、裏の戸を開けたとたん冷気が僕を包む。歩くにつれて汗ばむ季節がやっとすぎ、今は冷気を吸いながら暗い中、学校のグランドを歩くことがいかにも気持ちがいい。健康のためと半ば義務のように歩いているが、最近は冷気に包まれて心地よい。  眠るのも楽しみだ。本来僕は眠ることに興味がない。若いときは寝ることがもったいなくて、無意味に起きていた。さすがに最近は健康のことを考えてなるべく長い時間眠るようにしているが、それでも世の動きが気になってニュースのはしごを夜遅くまですることも多い。ところが同じくこの1週間は、早く布団の上に横になり眠りにつきたいと思う。なぜなら僕が寝る和室は、薬局が終わった時間に窓を開放しておくと、寝る頃にはすっかり冷気で満たされ、真夏に高山で眠るような気持ちのよさなのだ。それに誘われ、風呂上りの火照った体で横になり、深い眠りに一気に入っていく。もうこれはほとんど快感に近い。余談だが、深夜に決まってあまりの寒さに目が覚め、戸を閉めるのが日課になっている。自分でも不思議なのだが風邪を引かない。  この誘いは1年のうちに今だけだ。地球の誘いを十二分に満喫しておこうと決めている。