絶滅危惧種

 「普通の人ってこんなんですか?」如何にも普通の人が感激してこんな言葉を吐いてくれた。そうまさに普通の人は、朝大きなおならを一発して、日中調子が悪くても、もう一発か2発大きなおならをするだけだ。この女性はこの普通の範疇に入らずに苦労していたのだが、普通がどの程度のものか実感できたのだから、念願かなって普通にカムバックしたのだろう。  僕が尊敬しているあるお母さんは、自分の不調を並べて「他の人もこのくらい病気があればいいのにね。分かって貰えるから」と素敵な笑顔で言った。誰も真似ができないくらいお子さんの世話をされていて、笑顔が絶えないなんてありうるのだろうか、いや現実に目の前に腰掛けている人が、そのありえないことをいとも簡単に否定してくれる人なのだと、やって来るたびに感心する。  この仕事をしていてつくづく思う。普通の人になりたいとしばしば言われるが、普通の人は、お腹も弱くて、頭痛もして、食欲がなくて、腰や首が痛くて、ウツウツとして気分が優れず、お通じが悪くて、お腹が張り、寝つきが悪く朝けだるくて起き辛い。これが普通の人で、普通になりたいといっている人がイメージするのは、まったく健康な人だ。これは現代では、まずめったにお目にかかれないから普通ではない。どちらかと言うと絶滅危惧種だ。まともに生活していたら、ストレスによってかなり自律神経をやられるから、上に列挙したようなことは日常茶飯事だ。  僕は普通と言う言葉を使う必要がないと思っている。現代は普通と言う概念は崩壊している。目指すようなものではない。為政者は多くの普通を作れば安泰なのだろうが、市民がそんな柄に収まる必要はない。己の得意とするところをまるでお宅になって極めればいいのだ。だからおならの一つや二つ・・・