準優勝

 一気にチョウザメした。いや、興ざめした。あの胡散臭いインターネットの表紙で見つけていたのだが、今朝新聞で見てやはり本当の話だったんだと判り一気に関心がなくなった。恐らく僕の性格だったらこれからずっとその手のニュースに気をとられることはないだろう。恐らく狭い日本で同じような考えや印象を持ち行動に移す人は少なからずいると思う。  本人に罪はない。好きでひたすら練習を重ねた結果があの準優勝だったのだろう。むしろ美談だ。どのチャンネルを回しても彼の幼少時代の映像などが繰り返し流されていた。作った感じがなく素直に受け入れられる個性だった。あれだけ好意的な報道をシャワーのように浴びせられると多くの人がにわかファンになったのではないか。ここまでは良くあることで罪もないから問題はない。問題はこの後だ。彼が着ているユニフォームは例のハラクロという会社のものらしい。彼のおかげで名前が知れ渡ったお礼にかどうか知らないが、彼に1億円のボーナスを上げるらしい。会社が半分、オーナーが半分と言うから、さすがLサイズ、太っ腹だ。  実はこの日曜日に初めて僕はハラグロと言う店でズボンを買った。と言うことは僕のお金の一部が彼の元に行くってことだ。時間700円台で働いている多くの若者や外国人がいる一方で、テニスをしていたら1億円もらえる人がいる。いやあげれる人がいる。この不条理が僕は嫌いだ。もう十分稼いでいる人ではなく、もう十分失望している人々に配ったらどうだ。それもその行為を公表するのではなく、そっと。自給750円で13万3000時間働かなければ手に出来ないお金を、1万6000日働かなければ手に出来ないお金を、55年働かなければ手に出来ないお金を、こともなげに差し出せれる光景を想像させるのは残酷だ。この国はどの分野でも、せめて取り繕うこともせず、金目当ての「表無し」のすさんだ時代に入っている。