牛窓・亜細亜芸術交流祭

 初老の男性が腕を怪我したらしくて、ネット包帯を買いに来た。あいにく腕のネット包帯だけなかったので、先月オープンしたゴダイドラッグさんを紹介した。おそらくネット包帯などたくさん在庫をしているだろうから、無駄足には終わらないはずだ。以前ならひたすら謝るか数日待ってもらうかで、どちらにしても不満が残る。でもゴダイさんが出来てからはそういった気まづさがなくなった。男性は気持ちよく「じゃあ、行ってみるわ」と言って、東のほうに自転車で向かった。断って何の気兼ねがないのはありがたい。  妻はよく配達に出かけるが、そしてゴダイさんの前を1日に何回も通るが、男の老人が嬉しそうな顔をしてあのあたりで自転車をこいでいたら、たいていはゴダイさんに入っていくと言っていた。なんとなく僕もその光景が想像できる。今までなら、わざわざ車かバスかタクシーで近隣の商業集積地まで出かけていかなければならなかったが、時間を選ばずにいつでも気軽に買い物が出来るようになったのだからありがたいだろう。やっと牛窓でも日用品で,ないものがない状態になったのだから。そしてゴダイさんは不必要なものまで買ってしまわない規模だから、丁度いいのかもしれない。  おりしも今、第2回の牛窓亜細亜芸術交流祭というのが行われていて、新進気鋭の芸術家が牛窓界隈でパフォーマンスを繰り広げているらしい。その中心で世話をしている方がパンフレットを持ってきてくれた。出演者を見ても一人も分からないし、内容を見てもさっぱり想像できないが、とにかく時代を先取りしているのだろう。時代に取り残されている町で、時代の先端を行くアートが展開されるバランスが面白い。僕には繰り広げられるパフォーマンスより、企画した人たちのパフォーマンスの方が興味ある。田舎だから恵まれた資産を持っている人はいない。それでも何かの形でここに暮らした足跡を残したいと思う人は多いのだと思う。それが大きな足跡ではないとしても。