景品

 いつから始めたか記憶が定かではないが、毎月売り出し日というのを設けて、くじ引きで景品を持って帰ってもらうと言うイベントを去年の4月までやっていた。5月から市民病院の処方箋を受けることになってとても物理的に出来ないので残念ながら止めた。そもそも、楽しいとか明るいとかとても言ってもらえないこの業種だから、何かしら薬局にも楽しいことがあってもいいのではないかと思い企画したのだが、そして狙い通り結構楽しいものとして定着していたのだが、処方箋の人が押し寄せる時間帯はとても無理だろうと判断して止めた。  ところが段々処方せんを持ってくる人の流れが読めるようになると誰からともなく又始めようかという声が挙がりだした。特に、一番忙しい目をしているはずの娘夫婦が言い始めたから現実味を帯び先月から復活した。復活してみるとやはり薬以外の話題で盛り上がり、嘗ての楽しい薬局を取り戻したように思えた。そもそも僕の薬局は相談に来られた人にも小難しい話をしないから、とってつけたような格調はそもそもなかった。病気や体調不良が理屈で治るなら僕もその手のものを少しは訓練するが、残念ながらそんなもの腹から1回笑うことには到底勝てやしない。  景品を決めるのはずっと僕の係りだったが先月から姪がやってくれている。チラシもパソコンで綺麗なものを作ってくれる。「景品は華やかなものがいいですね。楽しいものもいいですね」と思案してくれているが「華やかなものもいいし、楽しいものもいけれど、うちには華やかな人も楽しい人も来ないから似合わん。やっぱり喜ばれるのは地下足袋か軍手か・・・」  本当にその手のものを揃えそうな僕の先手を打って、娘夫婦がしゃれたものを慌てて買って来た。「しゃれたものもいいけれど、うちにはしゃれた人が来ないから似あわん」