商圏

 今日、神戸から漢方薬の相談に来てくれた女性が「18キなにやら」で来たと言った。最後の方が良く聞き取れなかったから、指輪を売って来たのか、若い人が見てはいけない映画を見ながら来たのかと思っていたら、なにやらとても安い運賃で乗り放題のキップのことらしい。飲み放題と言うのは時々繁華街を歩いているときに見かけるが、乗り放題というのは聞いたことがない。最近の与党の政治家が言い放題、やり放題なのは知っているが、乗り放題に関しては全く知識がなかった。  彼女によると神戸からやって来て往復で電車賃が2300円ですむのだそうだ。片道の間違いではないかと思って確かめたらやはり往復なのだそうだ。僕が神戸にしばしば行っていた頃は恐らく1万円を少し出るくらいの新幹線代だったと思う。もっとも18キップとやらは新幹線や特急などには乗れないらしいから、長距離だと時間がない人には不都合だが、時間に余裕がある人には打って付けだ。まして今日尋ねたら神戸から邑久駅まで2時間でやって来たらしいから、岡山経由で新幹線で行くのとほとんど時間は変わらない。となると4分の1の費用ですむのだから利用しない手はない。  そこで僕は決めた。来るのに2時間、交通費が2300円ですむのだったら、神戸を僕の商圏にする。彼女のようにオリーブ園をコースに入れておいたらちょっとした観光旅行にもなる。人口が何百万人あるのか知らないが、神戸の街を制覇する。その為に僕は明日から白衣の替わりに割烹着を着るし、壁を優しいピンクの色にする