前島フェリー

 これが本当の灯台もと暗しだ。 何もすることがなければ、フェリーに乗って往復高松まで行ってもいいくらいなフェリー好きなのに、牛窓の前島フェリーについてはあまり知らなかった。時々関係者の人が買い物に来たり、チラシを置いてと頼みに来たりしていたが、特別興味はなかった。その圧倒的な理由は、僅か5分で前島に着いてしまうことだ。四国フェリーで高松に行くには1時間かかる。と言うより、1時間乗っておれる。僕は毎回、一番読みたくなくて後回しにしている学術書を持ち込んで、往復2時間読むことにしているが、これがもし前島フェリーなら、巻頭書きくらいしか読む時間がない。時に景色を楽しみ集中を切らさないように出来るのには1時間は長くもなく短くもないのだ。何かの宣伝のように丁度いいのだ。今日、前島フェリーの関係者と話をしていて、僕がフェリー好きだということが分かると色々なことを教えてくれた。  僕は僅か5分の乗船時間だと楽しむ暇がないことを理由に、もっと他の航路を作ったらと提案した。、それは恐らく法的に出来ないだろうと言う前提で。ところが、なんと規制緩和が進んで結構自由に航路を開拓できるらしい。もっとも経費とか保険とかで高いハードルはあるらしいが、やって出来ないことはないのだそうだ。 僕は今までいわゆる交通機関として前島フェリーを捉えていたが、観光資源として活躍しているらしい。なんでも今年は宮島の花火大会まで出かけていって、海から花火を楽しませたらしい。それと、いつだったかは忘れたが、なんと大分県まで出かけたこともあるらしい。フェリーを持っている自治体などあまりないから、そう言った需要もあるんだと、又それらの売り込みも努力していることを教えてもらった。 それに関連するが、実は驚きを持って聞いたのだが、例えば僕でもお金を出せば、貸し切りに出来るらしい。あの200人も乗れるフェリーを貸しきりにするのだから、1度借りれば僕の1年間の給料、いや今はもう年金生活者になってしまったから例えが悪い。普通の人の1年分の給料などではまかなえないのではと思ったが、意外や意外、1時間5万円くらいで貸し切りに出来るらしい。車が20台以上、人が200人乗せられる車に、僕一人で乗っても5万円出せば、きっと前島沖から犬島あたりまではクルージングしてくれるみたいだ。もし数時間借りれば小豆島どころか、高松にまで行って来れることになる。このお手頃感(僕にとってではなく企業や団体にとって)には正直驚いた。そしてそれ以上に何か牛窓を発展させるのにヒントになるのではないかと思った。いくら莫大なお金を積んでも、いくら豊かな都市でも海を作りフェリーを浮かべることは出来ない。海がある町だからこそ出来ることだ。  なんでもない会話から目から鱗の情報を教えてもらった。その方面にも滅法弱い僕だが、何か僕の数少ない興味が役立ち実現したらいいなと思った。まず近い内に久し振りに乗ってみなければ話は始まらないし、灯台もっと暗しになってしまう。