一長一短

 僕の漢方薬で効果を感じてもらえたのだが、漢方薬を3つも飲むとなると経済的な負担が大きいので、健康保険で飲めるようにと依頼された。薬局で扱っている漢方薬は必ずしも保険で出される漢方薬と一致しないのでどうしようかと迷ったのだが、なるべく内容が近くなるように考えて息子に紹介した。  その後は僕に主導権はないが、すこぶる改善して、漢方薬の評価を落とさなくて良かったと安堵していた。ところが、保険では3種類も飲めないと病院に指導があったみたいだ。薬局の場合、患者さんの経済が許せば可能だが、健康保険ではむやみやたらと漢方薬を飲むことが出来ないらしい。削られた一つの処方もとても重要な役割を担っているのだが、何故か保険での服用は認められなかった。  そうしてみると不便なものだ。場合によってはいくつかの漢方薬を組み合わせなければ効かないことがある。それを出来ないと言われたら医者も困るだろう。みすみす効きにくい薬を出すことになる。  興味があったので製薬会社の人に経緯を説明して、どうしてだろうと尋ねたら、岡山県は原則2剤だと思いますと教えてくれた。漢方薬の資源が枯渇しているときに、不必要に処方するのを副次的に防げるかもしれないと思った。  医師は切れ味鋭い現代薬を漢方薬と一緒に使える特権を持ち、薬局は規則に縛られない処方が使える特権を持っている。例えば僕も良く男の花粉症に女性の冷え性の薬を使う。健康保険なら許されないが、薬局の販売は自由だ。もっともなんでこんなものを飲まされないといけないのかと不評を買うが、僕の薬局に来てくれる人達は笑いながら許してくれる。  一長一短、帯に短したすきに長し。「丁度いい」は車のコマーシャルだけか。