さりげなく

 別にそれを目的に作ったのではないが、ある不快症状を治すための漢方薬を2週間飲んでもらったら、病院の睡眠薬と安定剤がいらなくなったと言って喜んでくれた。 そもそも問診(僕はそんな大袈裟なことはしないから雑談と言った方がいいかもしれない)をしている時から、睡眠薬や安定剤が必要な人には思えなかった。だから何故そんなものを飲んでいるのか不思議だった。ただ本人が喜んでいるなら僕がそれに介入する必要もないし、そもそも介入しない。本人次第なのだ。辛いことがあれば気持ちが落ち、食欲が無くなり、眠りにくくなるのは当たり前で、それを持って病気と捉える方が不自然のような気がする。だから僕はそれをウツウツと表現する。そう表現すれば睡眠薬や安定剤はいらない。ハーブ効果のある漢方薬とレベルダウンした話題の会話と笑いがあれば十分だ。そうすれば登場して頂いた人のように、睡眠薬も安定剤も止められる。恐らく漢方薬を作った日は1時間余り話をしたが、その中の9割9分は健康以外の話題だった。結構趣味が似ている、いや羨ましいほど趣味に近い職業だから、僕の好奇心が目覚めて色々面白い話を教えて貰った。どちらが薬局の主か分からないくらいだ。 僕は漢方薬を飲んで欲しいからと言ってお医者さんの処方を否定することは滅多にない。だから僕の漢方薬を飲んでいる人のほとんどはお医者さんの薬を飲んでいる。巷見ていると圧倒的にお医者ざんにこの国の人は救われているのだから、薬剤師ごときが現代医療を否定したりは出来ない。仮にウツウツをうつ病として薬物療法の限りを尽くすような医師がいても否定はしない。要は患者さんが救われているかどうかの一点なのだ。救われているならどんな介入も許されない。ただ救われていないなら、僕はさりげなく知識の限りを尽くす。