想定

  医師向けの文章だから長くて難解だが、医師がどの様に過敏性腸症候群を捉え治療しようとしているか良く分かるので抜粋した。これを読んで患者の側も考えて欲しい。

 過敏性腸症候群とは、腹痛と便通異常が相互に関連しつつ慢性に持続する機能的疾患である。先進国においては、IBSの発症率は人口の約10~20%と高頻度である。IBSは良性疾患であるが、生活の質を障害する。IBSについては消化管生理学、脳画像診断学、免疫学、細菌学、遺伝学、臨床疫学、心身医学の集学的動員により、中枢機能と消化管機能の関連(脳腸相関)の病態追究と治療評価研究が進んでいる。しかし、その成因の全貌は、いまだ明らかにされていない。IBSの病態生理として、脳腸相関が重視されている。脳腸相関の病態の詳細は、(1)消化管運動の異常、(2)消化管知覚過敏、(3)心理的異常──の3つである。  我が国の最近の研究で、IBS患者の生活習慣には健常者と異なる側面が多いことが判明してきた。IBS患者は健常者よりも不規則な食生活を送り、睡眠も不規則で、ストレスを多く自覚している。従って、IBS患者の生活習慣を考慮に入れた診療が重要である。IBSは、「腹痛あるいは腹部不快感が、最近3カ月の中の1カ月につき少なくとも3日以上は生じ、その腹痛あるいは腹部不快感が、(1)排便によって軽快する、(2)排便頻度の変化で始まる、(3)便形状(外観)の変化で始まる──の3つの便通異常の2つ以上の症状を伴うもの」と国際的診断基準のローマIII診断基準において定義されている。また、糞便の形状(外観)の割合で亜型を分類する。便秘型は硬便・兎糞状便が25%以上かつ軟便・水様便が25%未満。下痢型は軟便・水様便が25%以上かつ硬便・兎糞状便が25%未満。混合型は硬便・兎糞状便が25%以上かつ軟便・水様便が25%以上。分類不能型は便秘型、下痢型、混合型のいずれでもないものである。薬物療法が無効なら心身医学的治療も。医師が患者の苦痛を傾聴し、受容することはIBSの診療の基本である。その上で、病態生理について、患者が理解しやすい言葉で説明する。また、偏食、食事量のアンバランス、夜食、睡眠不足、心理社会的ストレスはIBSの増悪因子であり、除去・調整を勧める。以上を踏まえた上で、薬物療法を行う。薬物としては、消化管運動の調整のために消化管運動調節薬もしくは抗コリン薬を、消化管腔内環境調整のために高分子重合体を用いる。消化管に対する薬物療法によっても症状の改善が不十分であれば、消化管知覚過敏とストレス感受性改善のために、抗うつ薬抗不安薬を必要に応じて用いる。抗不安薬については、ベンゾジアゼピン系の場合は短期間にとどめるなど、常用量依存に注意しながら使用する。薬物療法が無効であれば、心身医学的治療の適応となる。

 こんなに難しいことを本当に考えて治療に当たっているのだろうかと素朴に疑問を持った。又患者が過敏性腸症候群という場合、恐らく多くの場合、ここに書かれているような便通異常ではない。彼らが本当に悩んでいるのは、多くはガス漏れなのだ。それに加えるならお腹が鳴ること、張ること、その後に便通異常が来るだろう。医師の興味と患者の訴えが如何にかけ離れているかよく分かる。又これだけ理詰めで来られたら患者も後に引くだろう。  患者の苦痛を傾聴しろと書いているが、なかなかそれは彼らには難しいようだ。忙しいと言うこともあろうが、元々そうした症状を想定していないから戸惑いがあるのだろう。僕は多くの過敏性腸症候群の人に会ってきたが、病気ではないことだけは断言できる。多くの好青年にこちらが癒されたり、希望を貰ったり、好奇心をくすぐられたり、色々な智恵も貰った。単なる個性を病気にした方が経済的な恩恵を受ける製薬会社が、ここ彼処で病気作り、病人作りを企てているように思えて仕方ない。  過敏性腸傷痕群も、我が子にも飲ますことが出来る薬で治すべきで、我が子に飲ますのを躊躇うような薬で治すべきではない。