興ざめ

 出た、ついに出た。と言ってもロト6の当たりが出たのではない。僕が何度も繰り返し言っているように、いずれ漢方薬は金持ちしか飲めなくなると言う話を先取りしているような事例だ。大手の漢方問屋のセールスが教えてくれたのだから嘘ではないだろう。若干の尾ひれを差し引いても凄いから、こうして紹介する価値はある。  花の都大東京のあるお医者さんは、診察をして漢方薬を1ヶ月分持って帰ったら実費で23万円だそうだ。保険診療ではなく実費だから腕に自信は相当あるのだろうが、23万円はそれにしても凄い。診察代や検査代がどのくらいかかるのか知らないが、それらを差し引いてもかなりの部分が漢方薬代と言うことになるのではないか。毎日漢方薬を扱っている僕からすると、一体どんな高貴な薬を使えばそんな金額になるのか想像もつかないが、それでも患者がやってくるのだから、東京人の所得の高さに驚く。高くても効けばいいと時に言ってくださる人も僕の薬局にもいるが、高くてものそもそもの値段が違う。丁度一桁は違うと思う。僕らの経済感覚から言うと、「高くても効く薬」を飲めないのだったら、安くても運が良ければ効く薬を飲むだろう。たかだか漢方薬のために首はくくれないから。 もう一つの凄いは、漢方薬を持って帰ろうが帰らまいが、相談すれば1万円というシステムだ。これは薬局でも採用しているところがあると言うから、それも又真似の出来ないことだ。田舎なんかでそんなことをしたら、町から追い出される。何でも教え合い、支え合って生活するのが当たり前だから、立ち話でもすむようなことにお金を要求でもしたら、代々呪われる。まるで八つ墓村だ。  いくらきれい事を並べられても、最後は札束を要求されれば興ざめだ。それでも尚敬意を払ってお供えをするのは、やはり都会の人の収入の高さだろうか。それはそうかもしれない、都会人に似合うのは興ざめではなく、あの高価なチョウザメだから。