正論

 折角、青年時代からの夢?リベンジ?を果たすことが出来ると思ったのに、娘達のアイデアの方が良さそうだ。次のチャンスを待つ。 古民家をほぼ倒し終えた前の土地は相当広く見える。変形した土地だから誰もが価値を置かなかったのだろうが、建物がなくなり綺麗な土を敷いたら結構魅力的に見える。僕のところみたいに暇な薬局が20台も入る駐車場は必要ないから、何かに使えないかと思案していたら、グッドアイデアが浮かんだ。まさに千載一遇のチャンスだ。まさにリベンジの時来るだ。  僕のアイデアはこうだ。いや今となっては「こうだった」だ。小さいログハウスを建て5つくらいのパチンコ台を置く。音楽は朝から晩まで大音量で軍艦マーチを流し、目がくらむほどの照明をつけ、天井からはパチンコの玉が流れる音がする。僕はわざと開店前に店の前に並び、昼ご飯はカップラーメンですまし、夜の8時までパチンコに興じる。青春期、なけなしのお金を持ってパチンコ屋に毎日通った。授業をさぼって一人孤独にパチンコ台に向かっていた。学校に行かねばならないと思っても体はいつも繁華街の方に向かった。折角入った大学だが、入って一月ももたなかった。毎日がまるで逃避行だった。後ろめたさだけが残った青春だった。 この後ろめたさの反動で、牛窓に帰ってからはよく働いた。休むことなく働いた。6年の空白は埋めて尚余るほど働いた。そろそろ周期から言えば弛緩期に入ってもいいから、目の当たりにした空き地を有効利用しようと思ったのだ。後ろめたさのまま6年間通いつ続けたパチンコ屋を自分で作り、堂々と心ゆくまでバネを弾いてみたいのだ。学生だから遠慮していたが、当時できなかったことをやってみたい。パチンコ台のガラスを叩きながら「おい、玉がひっっかったぞ」  瞑想にふけっていたら傍で娘が「お父さん、あそこは薬草園にしたらいいが」と言った。いたって正論だ。