品格

 温厚さでは右に出る人がいないくらいのあの先生が口火を切ってくれたから、あとが続きやすかった。長年の積もり積もっていたものを吐き出すことが出来た。 恒例の学校保健委員会が今日から又始まった。町内4つの学校を内科医と歯科医と僕とで廻る。それぞれが助言という名目で少し時間を与えられるのだが、最初に内科の先生が話をされた。本来なら生徒の健康のために話をするのだが、冒頭、つい今朝方の不快な出来事を、余程頭に来ていたのだろう話された。それは、近所に学校の先生が住んでおられるらしいのだが、全く挨拶が出来ないらしい。僕にもよく似た経験があるのだが、学校で会えば平身低頭してくれる先生が、実はこれはされる方はかなりストレスなのだが、地元に帰ればすれ違ってこちらが挨拶をしても返しもしないのだ。恐らくこれと同類項の不快さを抱えていて、ついに今日爆発したのだろう。  次に歯科医がそれに触発されて「健診の時に先生の方がうるさい」と苦言を呈せられた。勿論この先生もそんなことを口にされるような人ではないが、今はチャンスと若い先生方に-帰りがけに車で聞いた話によると中間管理職の男性教諭が一番駄目らしいけれど-今言っておかなければと思われたのだろう。  「最後にとどめを刺します」と断ってから、僕が話をした。いつか一般論として諭す機会がないかなと思っていたのだが、チャンスが向こうから転がり込んできた。僕の薬局は3台の車が道路と直角に駐車できる。だからほとんどの方は直角に入れてくれる。ところが学校の先生と警察官は、かなりの確率で横付けだ。1台で駐車場を塞いでしまう。用事が簡単にすむと思っているのか、真から威張っているのか、あるいはそう言った常識を誰からも教育されていないのか分からないが、とにかく非常識極まりない。
 先生方にとっては今日はとんでもない日になったかもしれないが、これはこちら側の期待の現れだ。同じ先生という言葉を使われて、どうしようもないくらい低俗な政治家に対して、品格を保ってその呼称に充分応えることが出来る職業であって欲しいと願うのだ。