化石燃料

 ある人が葬式に行って来たと話してくれた。この数年、慢性病のお世話をしているので最近の体調を尋ねた僕への返事だ。ただそれだけなら誰にでもあることだから特異な内容ではないが、亡くなった方の原因がまれなことだった。親類の男性が、自分の母親を車に乗せて道路を走っていた時に、鹿が出てきてそれを避けるためにハンドルを切って電柱に激突したらしい。その事故で助手席に乗っていたお母さんが亡くなられた。 人口が減少に転じて、過疎地の自然回帰に加速がついているが、その事を彷彿させる出来事だ。決して人が踏み込まないような山道ではなく、主要道での出来事だ。実は葬式の話をしてくれた人も又その地で同じような経験をしていて、鹿と言っても運転中に出くわすと、それも夜間が多いそうなのだが、ほとんど牛のように見えると言っていた。「あんなのにまともにぶつかったら死んでまうわ」と関西弁で教えてくれた。  そうなのだ、関西圏だから牛窓なんかよりどこを切り取っても都会のようなのだが、実は結構自然豊かなところが多くて、日本海寄りなど、日本の環境を支えているのではないかと思わせるほど田舎なのだ。最近そうした地方の人が直接やって来てくれたり、薬を送ったりしていて、何となく親近感を持っている。そんなおりの話だからとても臨場感があった。以前娘が勤めていた薬局も日本海に面したそう言ったところにあった。切り立つ岩山を抜けて走る単線の電車で会いに行った記憶がある。 牛窓辺りでも鹿に遭遇したという話が聞こえ始めた。僕はやま狸くらいにしか会っていないが、人間様が凌駕してきた地球の支配も何れは何かに取って代わられる。それが何かは分からないが、せめてそれらのために化石燃料の材料になって罪滅ぼしくらいはするべきだ。