条件

 ひょっとしたら僕は大きな勘違いをしていたのかもしれない。  休日で暇だからすることがない。いつもは若夫婦に任せきりにしている処方せん薬をぼんやり見ていて、目が抗ガン剤にいった。最近ユーチューブで耳にした「抗ガン剤マフィア」という言葉が耳に残っていたからかもしれない。1時間余りの講演会の録音だったのだが、その中で印象深かったのが、抗ガン剤が新薬として承認を得るときに添付する臨床成績が僅か21日間の成績しか載っていないってことだ。3週間で少し腫瘍が小さくなれば薬として有効と言うことなのだろうが、果たしてそんなに短期間の成績でその後を測ることが出来るのだろうか。抗ガン剤は扱うのも注意しなさいと言われるくらい強烈な薬品だから、投与したときには最初さすがの癌もやられるが、その後まるで農薬に対する害虫のように抵抗力を持って、盛り返してくるのは世の生物全般の常識だ。  ある抗ガン剤の臨床成績は21日間で奏功率21%と書いてある。と言うことはこの薬を飲まされた4人に一人も効かないことになる。その代わりと言っては何だが、その薬を飲んだときの副作用は白血球減少が48%、貧血30%、血小板減少20%、脱毛32%、食欲不振28%、吐き気20%などで、何らかの副作用で苦しむ人は76%に及ぶ。効果があるのが(治るのではない)76%で副作用が21%ならまだわかるが、どうも逆だ。細胞分裂が盛んな場所、骨髄や粘膜や毛母細胞などを攻撃するから上記のような副作用で苦しむ。そしてよく考えてみれば、血を作る場所や、食べ物を食べて消化吸収すところが副作用によってやられるのだから、元気になるはずがない。免疫機構の中枢が集中的に破壊されていることになるのだから。  僕は好んでガンの方の世話はしないことにしている。余りにもテーマが大きすぎて僕自身の体調がついていかないから。ただ、長年お付き合いのある方が増えたから、そうした方には勿論頼まれれば漢方薬を作る。僕が作る漢方薬は、簡単に言うと元気にする処方だから、元気に治療を受けることが出来るし、その結果抗ガン剤の悪い面が出にくい。だから担当医が驚くほど回復することもしばしばだ。抗ガン剤マフィアの話を聞くまでは、遠慮に遠慮を重ねていたが、もう少し積極的に関わってもいいのかと思うようになった。難敵だからこそ謙虚な態度を忘れずにと言う絶対的な条件の下で。