戦友

 僕の性格に連続性があるのか、あるいは何処かで大きな変化をしたのか分からないが、よく考えてみれば、人生の半分以上を病気の人、あるいは不調の人ばかりと接してきている。浪人時代を含めて学生時代の6年間は(4年生大学だが)見事に劣等生ばかりとつるんでいたから、もうかれこれ40年以上ほとんどまっとうな人と接してこなかったってことだ。まっとうな人、あるいは尊敬されるべき人は、片手あれば十分余る。ひょっとしたらVサインですみそうなくらいしかそんな人はいない。  ほとんどよどんだ川の中を泳いできたから、僕自身も勿論よどみきっている。身の引き締まるような清流を知らない?忘れた?ただこのよどんだ流れがなんとも言えず気持ちがいい。このまっとうではない人達の中にいるのがなんとも言えず気持ちがいい。言葉も態度も鋭角を知らない。傷ついて自信を失っているときは、気弱が見え隠れするときは、人は人格を気取らない。素のままで接してくれる。素のままでしか接することが出来ない僕にとっては最高の舞台なのだ。上がることを躊躇うような舞台は似合わない。脱力した神経こそが僕の活力なのだ。  戦いは破れるものと思いこんでいる多くの戦友と見えないものと戦ってきた。分けあう戦利品は少ないが、舐め合う傷は多かった。でも戦場は荒れ果てた荒野ではなかった。生きるに不器用な人達の歌声は風にのって山肌を駆け下りた。ただ一つ、健康すぎる不健康だけには冒されなかった僕の戦友達にこれからも届け人恋の風。