美貌

 小さな町だから、立派な人も大金持ちも学者も芸術家も芸能人もスポーツ選手も出ないが、こんな人は幾多の確率をくぐり抜けて出るものだと思った。割に合わないけれど出たものは仕方ない。 特に眼の回りを赤くして、それでも全体的に何となく皮膚は萎縮していて、一見タバコをよく吸う人の肌みたいに部分的に老人の肌をしている。その治療自体難しくはない。1ヶ月前からお世話しているがずいぶんと改善した。ところが先週の金曜日に岡山市に出かけ、ちょっと贅沢にパスタの店に入ったらしい。そこでパンとパスタを腹一杯食べたのだそうだ。その辺りが如何にも牛窓の女性らしい。上品に味わうくらいにすればいいのに、満腹になるまで食べたのだろう。ところが翌日に、又以前のように顔全体が赤く痒くなり、特に瞼の辺りは悲惨だったらしい。でも僕の薬がまだ残っていたらしくて、それを塗ったらここまで収まったと、ことの顛末を教えてくれた。  この女性こそがかの有名な石鹸の被害者なのだ。僕はユウカか何かと言う名前の石鹸とは知らず、女優の名前がそう言う名前かと思っていた。こんなに人口の少ない町で、よりによってあの有名な被害の当事者がいるなんて。宝くじより難しいのによくぞ当選したものだ。それにしてもあの女優は恥ずかしくないのだろうか。責任くらい感じればいいのに、いや感じた振りだけでもいいのに、すぐに他の宣伝に出ている。いい気なものだと思うが、そんな庶民の感覚はないのだろう。当分恥ずかしくて出歩かないくらいが庶民感覚だが、出るわ、出るわ。同じ石鹸を使えばあんなに綺麗になれると幻想を振りまいた美貌は認めるが、精神に美貌は感じられない。又あの美貌で新しく世の女性達を何かの商品に誘導するのだろうが、せめて心の中をユウカの石鹸で磨いて出直して欲しい。  「一度アレルギーを起こすと、同じ種類のもので簡単にアレルギーを起こすようになるよ」と女性には説明したが、ユウカになり損ねた女性の方が余程有価だ。

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