嘘ついてごめんなさい

 ついに来た。見苦しいが今週中に、ヤマト薬局のスタッフの写真をホームページに載せる。正確に言うと載せてくれるらしい。ずっと拒んできていたが、パソコンの操作についていつも助言してもらっている漢方問屋の専務さんに押し切られてしまった。今は食材など生産者が分かることが大切なのだから、漢方薬では尚更だと言うのだ。ところが僕にはそれが出来ない理由があり、断固断っていたのだが、時代の趨勢に抗う訳にはいかないらしい。まして僕みたいな田舎の薬局が信頼してもらうのには大きなハンディーがあるのだから、素性を明らかにすべきと言うのだ。僕は素性を言葉で明らかにするように長い間努めてきたが、多くの言葉より視覚の方が雄弁な時代なのかもしれない。 僕が写真を公開できなかったわけは、言わずとしれた福山雅治似と偽り続けた過去があるからだ。今になって後悔している。朝青龍似で通すべきだった。どちらかというとそちらの方が圧倒的に近いから。でもまあ、同じような人間はいるもので、笑点三遊亭小遊三や、漢方薬を送っている若い女性のお父さんも同じようなことを言っているらしいから許してもらおう。  写真を載せることでウソがばれることよりも実は気がかりなのは、世の常識とは逆のことも起こりうるってことだ。生産者の顔が見えることで信頼が増すらしいが、僕の場合はその事で信頼を失うのではないかと言うことだ。ある日突然やって来て撮られた写真だから、洋服の青山にも行っていないし、1000円カットの店にも行っていない。ぶっつけ本番だ。取り繕う暇もなかった。  実は専務さんに頼んで僕の所だけモザイクを入れてもらったのだが、これは僕も笑った。なんだか怪しげになって、下品この上なかった。結局無駄な抵抗はいっさい止めたが、写真を撮られるのが恐い時代に属する僕にとっては、今でもモザイクの中に逃げ込みたい気分だ。