寄り切り

 それはないだろう。天下の○○○の生薬の現地生産現場にもっとも詳しいと言う方の講演が、薬剤師会の後援であると言うから聴きに行ったのだが、全くの肩すかしだった。案内には、産地の写真や原型生薬を沢山揃えた講演の他、中国に於ける生薬価格の高騰や、国内生薬の放射能の問題にも触れて頂くとあった。ところが洒落ではないが、放射能については本当に触れるだけで、数秒ですんでしまった。あくび一つの時間で放射能に関しての話が終わってしまったのだ。  ほとんどの聴衆を占める若い薬剤師が、それも女性の方が圧倒的に多かったように見えたが、こんなに無関心でいて良いのだろうかと思った。薬剤師という肩書きがなくても出産という大偉業を無事成し遂げなければならない人達が、放射能の内部被爆によって遺伝子がメチャクチャに破壊されることを意識しないのが不思議だ。ましてそれが薬剤師なら患者の身に同じことが起こらないようにそれこそ指導しなければならないのではないか。以前にも書いたが、それは薬剤師にとって報酬が伴わなければ無駄な行為なのだろうか。薬剤師100年の悲願の医薬分業は、一つ一つが金と引き替えの業務なのだ。  あまりにもの肩すかしなので、黙っていようと行く前には決めていたのだが一つ質問してみた。「中国からの供給難を見越して、国内に5箇所自社生産できる地域を重点的に整備すると言われましたが、具体的には何処ですか?」と。すると5箇所教えてくれたのだが、その中の2箇所は「東日本大震災以降に指定された自治体から産出された漢方生薬製剤原料を使用した医薬品は自主的に回収して報告する」と厚生労働省からの通知で指定されていた地域なのだ。その事を講師、あるいは会社が知らなかったのか、重視していないのだろう。それが証拠に「あれらの地域は安全ですから、問題ありません」とまるで根拠のないことを言うし「一番可哀相なのはお百姓さんです」などと小声でつぶやいたりしていた。あの事故を最小限に見せようと犯罪的な隠蔽を行っている国でさえ認めた危険地域で、生薬原料を生産しようと言う魂胆が僕には理解できない。  恐らく今一番の問題点に何ら配慮も勉強もしていないのが見え見えだったので僕は会場を出た。せっかく天下の○○○だから業界をリードするような厳密な対処をしているのかと思ったら、やはりこの会社は巷言われるように所詮政治力に秀でた会社なのだろう。偶然事故現場から一番遠い台湾の漢方薬を30年使ってきていて良かったと、帰りの車を運転しながら再度確認した。もしこの記事を読んでいる人の中で、将来天下の○○○から台湾の漢方薬に変えて欲しいと思う人は処方を教えてくれれば簡単に変えられる。まあそんな人は僕の読者の中にはいないか。ほとんどそれは保険で飲まれている漢方薬だから僕らとは土俵が違う。  今日僕は完全にあの自信に会場の外まで寄り切られた。

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