訪問者

 土曜日の朝、NHKの番組で「ぶらり西日本」?と言うのがある。別に好んで観るわけではないが、他の放送局で観るに値する番組がないことで、そこにチャンネルを合わせていることがある。でも見始めると結構、色々な町の風情に興味を持つことが多い。中には引退して時間でも出来れば訪ねてみたいなと思わせるような所もある。 その程度の興味で今朝もテレビを観ていたら、なんと牛窓が取り上げられていた。勿論映し出される場所や人はほとんど分かったが、僕が関心を持ったのは、さてあの知り尽くしている牛窓をどの様に表現して、視聴者に訪ねてみたいと思わせることが出来るかだった。日常漠然と視界に入っているものでも、カメラを通して映し出すと1枚の絵になることは多い。それが誇大広告になっていないか興味を持ったのだ。牛窓の現実と映像とのギャップが分かれば、他の地の映像も同じ尺度で冷静に判断することが出来る。  感想は誇大広告だった。切り取った風景や風情は、わざわざ訪ねてくる程のものではない。どこの町でも同じようなものは見られるし、同じような風情にも浸れる。何もないところがいい所などと、居直る度胸があるなら今のままでもいいかもしれないが、あの映像を見てきた人には後ろめたさを感じてしまう。 何も力がないからついぞその方面で自分の町に貢献は出来なかったが、僕の薬局に遠くから来てくれる人は徐々に増えた。観光客とは言えないが、立派な訪問者だ。しかし僕の薬局に来たついでに、少しだけ町を散策してくれれば立派な観光客に変わる。漁業者や農業者や観光業の方のように大きな貢献は出来ないが、少し健康になって少し笑って帰って貰えればささやかな牛窓の名産品になれると思っている。この町に対する恩返しはそのくらいしかできない。寂れゆく町を逆手にとって純情を漢方薬に添えて提供したいと思っている。