一蹴

 厚生労働省の自殺、鬱病対策プロジェクトチームが、精神科や心療内科の受診患者にしばしば見られる、向精神薬の過量服薬の防止策として薬剤師の活用を提言したそうだ。 もう一つ、同じ向精神病薬について話題がある。複数の医療機関から向精神病薬を処方されている生活保護受給者の7割に不適切な受診があると言うことだ。上品な書き方をしているが要は自分でガボガボ飲んでいるか、横流ししていると言うことだろう。 僕はこれらのことを防ぐのはかなり難しいと思っている。牛窓みたいな田舎の薬局、それも地元で生まれ育った人間ですら、すべての人を把握するのはとても出来ないから、都市部にある薬局など患者の性格や暮らしぶりを想像することなど不可能だ。それにもまして大切なことは、患者がガボガボ飲もうが横流ししようが、薬局を含めた医療機関がそれで利益を得る現実が横たわっているって事だ。患者から直接お金をもらうならまだしも、保険という名の迂回した支給だから誰も懐が痛まないのだ。痛まないどころか潤ってしまう。ほんの少しの良心の痛みを怠慢に置き換えれば懐に入るものをみすみす逃すはずがない。最早多くの薬剤師が、企業の雇い人だから収益を強要される存在でしかないのだ。  それにしても簡単に手にはいるものだ。偽の処方せんを作って必死で手にいれようとしている人から見れば羨ましいくらいだろう。どんなにその種の薬がいいのかどうか僕は服用したことがないから分からないが、とんでもないものにとりつかれたものだ。僕などせいぜいリポビタンかユンケルくらいしかわざわざ飲みたいとは思わないから、安く済むし、美味しいし、ついでに150円分か500円分元気になる。以前ペットボトルで作ってくれと会社に言ったが、一蹴された。結構僕は本気だったのだが。 社会の信頼関係に依っているシステムが、どのくらい信頼関係そのもので崩れていっているのか分からないが、病気の克服のために研究され商品化されたものが、皮肉にも社会の病根の一つになろうとは、研究者は考えも及ばなかっただろう。