山鳩

 2回目のツバメの赤ちゃんが巣立ってほっとしたことをある方に話したら、その方の家では鳩の卵が孵るのを見まもっているらしい。ツバメなんかで悦に入ってはいけないのだ。上には上がいる。同じ牛窓町でもかなり環境に差がある。と言ってもその方は牛窓沖にある前島と言う島だから、のどかさは本土の比ではない。 目と鼻の先にあるその方の畑になすびを植えている。竹を組んで蔓を伸ばしているのだが、その竹と竹が交錯する辺りになんと山鳩が巣を作り卵を抱えているらしい。今度の鳩は巣づくりが下手と言うくらいだから初めてではないのだろう。昨日彼が畑仕事のついでに巣を見に行ったとき、遠くから何か黒い紐が見えた。近寄ってみるとそれは蛇だった。卵を狙ってまさに接近していたのだ。勿論彼は棒を持って撃退したらしいが、そんな騒動も知らずその後、鳩は卵を抱いていたと言っていた。  蛇は卵の在処を知ってしまったから、又狙うんじゃないのと言ったら、そこまでは守ってあげることは出来ないと言っていた。カラスくらいなら網ででも防げるが、蛇はどうやって防ぐのだろう。一度目にすると情が移り、やはり無防備な存在は守りたくなるのだ。人間の本能的な善なる部分かもしれない。可哀相って感情が芽生えるのだ。まるで赤ちゃんに対するように。  どうして野生の鳩が人間を信頼するのか分からないが、基本的には相性がいいのだろう。平和の使いなどと最高級の賛辞を送っているのだから。どんな根拠があるのかも分からないで。見た目で判断されたら蛇はかなわない。ほとんど地獄の使者だ。本当は殺戮が好きな鳩もいるだろうし、優しい目をした蛇も・・・・いや、これは絶対無い。やはり大の苦手だ。理性では越えられない。