過労死

 医師の過労死が今年急増しているらしい。麻酔科、小児科、研修医に集中している。これは認定されただけだから、実際にはこの数より多いと推測されている。これらの科は、最近特に耳にする医師不足の代表的な科で、長時間の拘束を受けまさに「寝ずに働いている」  猛烈な勉強をしてせっかく勝ち得た免許が、こんな理不尽な理由で失われるのはもったいない。家族の悲しみは想像を絶するだろう。恐らく、不満を言わずに頑張りすぎた人が犠牲になったのだろう。手を抜くことをしなかった、或いは性格的に出来なかったのだろう。  ある医大の学長が現代の医学部の学生は気の毒だと言っていた。その方が医師を志した頃の何十倍も今の学生は知識を詰め込まなければならないからと言う理由だ。そういえば僕が学生の頃、医学部の学生が、試験で通らなかったから、試験管洗いを手伝ったら教授が合格させてくれたと言っていた。まだのんびりとした良い時代だったのだろう。そんな雰囲気は今の大学は勿論、病院にもない。勤務医の過酷な労働のおかげで何とか持っているだけだ。あれだけしんどければ開業でもしようと思うだろう。病院で高度な治療をしている人達も、開業すればただの血圧や風邪を診るだけの仕事になる。知識や技術やチームワークがもったいない。パソコンにばかり向かい患者の方に目もくれない医者などと酷評されながら頑張っている医師達が気の毒だ。どこかで気を抜き、運動をし、家族と過ごす時間を保証されなければ、医師の能力のすべてを導き出すことは難しいだろう。マスコミに登場するカリスマ医師が、ホカ弁を食べているようではだめだ。それは絵にはなるが好ましくはない。健康的な精神、肉体であって、初めて良い医療は施されると思う。  経済だけが先導した歪みに今あの世界も苦しんでいる。