不恰好

 何年か挑戦したあげく、今年初めて駐車場の鉄筋の梁の隙間にツバメが巣を作った。何が難しいのかしらないが、出来あがりを見ると洞窟のようで、これならカラスにも狙われないだろうと思った。薬局の店頭には2つ巣があるが、カラスの餌食になりやすい。駐車場の巣はカラスには見つかりにくいと思うが、今度は蛇が心配だ。  昨日の夕方、巣から一羽、まだ飛べないツバメが落ちていた。偶然糞を受ける箱を置いていたから衝撃は弱かったのだと思う。まだツバメのようには見えない雛は、悲しげな、絶望的な泣き声を上げているが、親ツバメにはなにも出来ない。少し離れた梁に止まり、落ちた雛を見ているだけだ。僕は脚立を持ってきてそっと返してやった。間近に巣を見てみると、何せ狭い。こんなに狭ければ、どじな雛なら落ちてしまう。案の定、巣に返したツバメはなかなか中には入っていけずに、何度も落ちそうになっていた。それでもやがて巣の中に消えていった。  小さな、柔らかい命を救えた。日々生きてはいるが、なにの善行も出来やしない。落ちた雛など無視することは簡単だ。だけど殺伐とした最近の身の回りの状況の中だからこそ、見捨てることは出来なかった。不恰好な命は、不恰好に生きているやつに救われた。