酒に酒を注ぐ

 じっと目を凝らしてみれば見えてくる。耳をすませば聞こえてくる。嗅覚を研ぎ澄ませればにおって来る。僕を必要としてくれている人が必ずいる。その姿を見る力が僕にないのだ。その声を聞く力が僕にないのだ。もしその姿が見え、もしその声が聞こえたなら、僕は勇気を持って行動しよう。僕の毎日は、水に水を注ぎ、酒に酒を注ぐだけだった。なにも変わらない、変えれない非生産的な毎日だった。今日初めてであった数人に漢方薬を作った。漢方に縁がなかったけれど仕方なく始めなければならない人にも作った。もう何回も服用している人にも作った。こんな僕を頼ってきてくれる人達、こんな片田舎にまでわざわざ来て下さる人達、会ったこともない僕に薬について相談してくれる人達。五感を働かせて体の歪を見つけ、それを正せばかなりの不快症状が改善される。僕が与えることが出来るのは漢方薬の知識と薬草。それに一寸ばかりの解放感。歯を食いしばって生きている人達の一瞬の空気抜き。  いたずらに自分を卑下すまい。そこからは何も生まれてこないから。勇気を出して回りを注視し、僕の力が役立つなら変化を恐れまい。