飽き性

 僕は、一つのことを集中してやり遂げることが下手なので、いくつかのことを並行して進めていく。そうすると飽かないのだ。飽かないと言うより、飽くまでしないという方が正確かもしれない。能率は僕にとっては重要なのだ。だから少しの時間の単位ですべきことをはしごする。今この時間も、特別養護老人ホームの入所者の薬を作りながら、漢方の研究会のまとめをしながら、わきがの塗り薬(僕の特製)を作りながら、今日調剤した患者さんの薬の履歴を整理しながらと4つの仕事をローテーションして頑張っている。そもそも僕は、シャッターを降ろしたら原則として仕事のことは考えないようにしてきた。この数年、メールを下さる人が一気に増えたのでその返事を書く時間になってしまったが、長い間夜の8時を境に頭を切り替えていた。ところがこの10日間は、1日17時間くらい薬剤師になりきっている。人に比べて多いのか少ないのか知らない。ただ自分の30年近い薬剤師人生でこんなことはなかった。本来僕がやるべき仕事だけならこんなに頑張る必要もなくのんびりと開局時間内で出来る。薬剤師さんが体調を崩して彼女がやってくれていた仕事を僕が肩代わりしているのだが、なれていない分能率が極端に悪く時間が足りない。このままでは僕が応対すべき患者さんと会話も出来ない。薬局の質は早晩落ちていくに違いない。元にホームページでのミニ知識の提供もままならない。僕の薬局は安売りするところでもないし、医者のお零れを頂戴するところでもない。何かの縁で訪ねてきてくれた人達が、漢方薬の力を借りて、トラブルを解消して帰っていくところだ。調剤室から声だけで応対した幾人の方、許して下さい。僕はそんなにえらそうな人間ではない。ただ、契約している調剤を懸命に間に合わせていただけなのだ。あなたたちの心を犠牲にして。