空腹

 自分で言うのも気がひけるが、今日は本当によく働いた。僕の薬局では病院関係の調剤は全部薬剤師さんにやってもらっている。勿論僕も薬剤師なのだが、若い時に調剤した経験がないので調剤コンプレックスの塊だ。幸い病院で調剤の経験が豊富な薬剤師さんと縁が出来てもう10年来手伝ってもらっている。最近体調を崩して、今日は仕事にこれないかもしれないと予想されたので、僕は今朝は5時に起きて、早速煎じ薬を作り始めた。今まで使ったこともない最新鋭の分包器を1日中使わなければならないから、僕本来の仕事は開局前に出来るだけ片付けておきたかったのだ。悪戦苦闘しながら、結局朝パンを1枚食べただけで、夜の8時まで、ほとんど立ちつづけて仕事をした。いつも胃の裏が痛いのだが、今日は心地よい空腹感と長いお付き合いが出来て、とても体調がよかった。いかに日頃が食べ過ぎかよく分かる。やはり人間は空腹には強いんだ。さて今まで1年以上も避けていた機械だが、さすがに自分で調剤しないといけない状態におかれると、ブロッキング現象さえ姿を消して、貪欲に知識を吸収しようとする。その姿勢に驚いた。特別養護老人ホームの何十人かの調剤が終わったころには機械のことも少し分かるようになった。ただ、今日はどうしても僕が応対しなければならない人以外は、挨拶すら出来なかった。これはよくない。僕は病院の下請けではなく、僕でしかお世話できない方々の為にあるのだから。