機関銃

 恐らくお嬢さんは僕より少し年が上。従ってお母さんもまた僕の母より少し年上だろう。指がしびれることと、腕に力が入らないことを主に訴えて1年以上前やってきた。熱心に漢方薬を飲まれ、今では指先に気がつくとしびれを感じるくらいに改善し、手を握り締めることも出来なかったのが今ではほとんど完全に手が握れる。  別に病状の説明をするつもりはない。それなら僕のホームページを読んでくれれば分かる。僕が敢えてここに書きたく思ったのは、母と子の心温まる関係に、毎回心を洗われるからだ。お嬢さんが、とても大切な人を扱うように、丁寧に耳が遠いお母さんに通訳する。それもゆっくりと、急かすこともなく、お母さんのスピードに全て合わせている。相談机の前にいつも二人腰掛、漢方薬が出来る時間話をしている。恐らく同じ屋根の下に住んでいなくて、お母さんを車で連れてきてくれているのだと思うが、積もる話を機関銃のようにするわけでもない。あくまでゆっくりとした時間が流れている。  この仕事をしていて毎日多くの方に会う。総じて、娘と母親と言うのは仲がよくて友達のようによく喋る。男にはなかなか理解し辛いところだ。父親は娘とはいくらか話は出来るが、息子との関係はなかなか難しい。父親と息子がやってきて、二人一緒に漢方薬が出来るのを待つなんて光景はそう言えば見たこともない。男は戦うように出来ているのか、どこか心に鎧をつけている。本音を隠して生きていかなければならない時が多いから結構苦しい。無理をしないでと声をかけている自分が一番無理をしているなんてことも日常だ。